(09-02)

9−2 食道発声の達人

第一回 食道発声の達人



私の日常の中の代用音声

  西松 敏夫(S18生)

H13.3 単純喉摘

音声再生

 手術をして7年と6ヶ月になります。私は食道発声、笛式人工喉頭、電動式人工喉頭の三種類を使って生活をしております。この三種類の代用音声をどのように習得したかをお話致します。
 まず私は食道発声の練習を始め、約6ヶ月で習得することができました。続いて笛式は1ヶ月で習得し、電動式は1、2回教室に出て説明を聞き、後は自分で練習して習得致しました。
 さて、この3つの代用音声の使い分けをお話致します。まず、家庭の中など日常生活では、食道発声で十分間に合っております。しかし、大きな声で正確な発声が必要であり、相手の言うことに言い返す必要があるというような交渉の場合などには、笛を使っております。具体的には、役所への届出、申請や何か物を買うときのやりとりなどです。
 ただ、ある時、病院で笛を使っていて、看護師さんにやかましがられたことがあります。笛は、種類によって音の大小がありますので、状況によっては、笛の種類を選んで使います。
 童謡や歌謡曲、演歌などの歌は、食道発声か笛で歌いますが、演歌は、何故か私には、食道発声の方が歌いやすいです。
 以上のように、私はこの三種の代用音声の使用の経験を積み重ねて、それぞれの特徴を生かし、お話致しましたように使い分けており、ともに支障なく生活をしております。




第二回 食道発声の達人


声を失って____

  樽谷 信行(S24生)

H19.7 単純喉摘
中級:6ヶ月/上級:1ヶ月


動画再生

 平成19年7月25日、喉頭がんの摘出手術をしました。まさか、自分が声を失うなんて、想像もしませんでした。
 手術の前に病院の先生から
「皆さん、練習によって言葉を取り戻していきますよ。ある人を紹介しますので会ってください。」
 そして、手術の前日、阪喉会の指導員の先生を紹介されました。
 指導員の先生から
「声は取り戻せます。いっしょに頑張りましょう。」
と勇気づけられ、9月より練習に参加しました。
 まず、驚いたのは、皆さんがとっても明るいことでした。大変な病気のあととは、とても思えませんでした。
 ラッキーなことに、その時、いっしょに練習を始めた仲間が大変楽しい連中で、毎回参加するのが、楽しくてしかたがありませんでした。
 練習は、指導員の先生のおっしゃる基本が一番だと思います。基本をしっかりやることが上達の早道だと思います。

 仕事に復帰すると、自分の言葉が理解されなくて悩んだ時もありましたが、恥ずかしがらず積極的に行動すれば解決します。
 私が言葉の重要なことに気が付いたのは、話すことでまわり(の方)が、健康になったと大変喜んでくれたことです。黙っていると、(まわりの)皆もどうしていいか分からなかったそうです。
 今は、手術前のように普通に接しています。

 話は変わりますが、我が家には鬼の指導員がいます。
 私の妻です。非常に仲のいい夫婦ですが、練習は厳しいものでした。
「お父さん、電話、鳴ってるよ。」
「お父さん、玄関にお客さま。ちょっと出てくれる。」
 買い物に行くと、
「焼肉のタレ、何処にあるか聞いて来て。」
 レストランでは、
「トイレに行くから、注文しておいて。」
 とにかくしゃべらないと、生きていけない状況でした。
 おかげで、今では、なんとか普通に生活できるようになりました。

 残念なお知らせですが、今年2月のPET検査で、肺にがんが見つかりました。
 現在、抗がん剤治療を受けていますが、家族や友達の励ましで、毎日頑張っております。
 1ヶ月のうち、入院10日、仕事10日、家内との思いで作りに10日とローテーションを組んで過ごしています。
 まわりの気配りに感謝しながら、毎日楽しく過ごしています。

 病気は大変ですが、気持ちの持ち方で、元気に暮らせます。
 今は、この時間が、長く続くことを願っています。