はじめに
この度、喉摘者の代用音声の習得に資するべく、阪喉会のホームページにカラオケコーナー(仮称)の新設を検討しています。第1回目は試験版として、取り急ぎ協力をお願いした3名の方の歌を動画で掲載します(それと電動式の方1名に、音声のみでご参加いただきます)。以後は、歌ってみたいという希望者を募って、2ヶ月くらいの間隔で更新できればと考えています。
このコーナーの主旨は、歌のうまい下手を競うのではなく、発声力と発声時のリズム感を習得する訓練の一環として挑戦して頂きたいと考えています。
人の声の高さは、喉頭がある場合には声帯の振動数によって決まります。食道発声での声の高さは、振動部分である仮声門の粘膜の振動数で決まり、仮声門の質量や緊張度(仮声門の粘膜を伸縮させる力の度合い)によって決まります。質量が大きく、緊張度が緩いと低い声になります。一般的に食道発声では低めの声になります。
喉頭があった時は、声帯(粘膜に覆われた伸縮する筋肉からなる一対の帯)を伸縮することにより、高い声、低い声を出していましたが、食道発声での仮声門は後天的に作られた器官ですから、自在に緊張度を上げたり下げたりすることはできません(自在に音の高低を制御することは困難です)。が、歌を歌おうとすることにより、少しずつそれが可能になるのではないかと期待するものです(食道発声の指導では、「高い声を出す場合には、上顎に当てるようにして発声する。」としていますが、これを実際に習得する訓練にも歌は最適だと思います)。
喉摘前は、何かにつけ歌を、カラオケを楽しんだ方が多いと思います。
歌にはメロディ、リズム、強弱があり、食道発声を始め代用音声で歌を歌うことは難しい課題ですが、歌を歌うことは、発声時の息の調整、会話のアクセントおよびリズム感を習得する上で効果があると考えられます。それにもまして、歌うことはストレスの発散にもなり、日常生活を送る上での自信にもつながります。
最初は小学校唱歌など音域の変化幅の小さい単調な歌から練習されるとよいかと思います。
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