(08-01)

8.医療動向・ニュース

 このコーナーでは、同病者の方のお役に立ちそうな情報を、順次ご紹介していきます。



著作権等について

 このコーナーでご提供する記事は、同病者の一助となるように、主にインターネット上の情報を参照・引用して、編集・作成したものです。従って、著作権は、元の情報発信者に帰属します。可能な限り、引用元を明記しています。

 記事の利用に際して、特に医療内容に関わる事柄については、主治医にご相談ください
 また、これらの記事の利用は、営利目的ではない個人に限定させて頂きます。



情報の鮮度について

 情報の鮮度は、作成日付当時のものです。従って、流動性のある情報については、日時の経過で現在のものと差異がある場合があります。




8−1 ニュース

8−1−1 重粒子線治療

切らずに治す! −高度先進医療/重粒子線治療 (作成:2009/02/12)

参照・引用:http://www.hirt-japan.info/
(財)医用原子力技術研究振興財団  http://www.antm.or.jp/
(1)重粒子線治療とは

 がんの位置、大きさや形状に合わせて線量を調節し狙い撃ちできる重粒子線治療とは、線量の集中性が高い、あるいは細胞致死効果の高い重粒子線を使ってがん病巣を集中的に攻撃し、切らずにがんを治す最先端治療です。手術をしませんので、体にやさしく、早期の社会復帰ができ、QOL(生活の質)を重視した、現代社会の要望に応えた治療法といえます。

 現在、わが国で重粒子線がん治療に使われている粒子線は陽子線と炭素イオン線の2種類(注)です。この治療のためには加速器という大型の装置が必要ですが、普及を目指した小型加速器の開発が急速に進められています。

 しかし、重粒子線治療は全てのがんに適応できるわけではありません。特に、胃や腸のように不規則に動く臓器、白血病のような全身に広がっているがん、広く転移したがんおよび既に良好な治療法が確立しているがんには適応できません。対象となるのは、局所に留まっているがん、悪性黒色腫のように通常の放射線が効きにくいがん、手術の難しいがんなどです。


(注)重粒子線とは、電子より重い粒子のビームの総称で、陽子線を含んで使用されていたこともありましたが、、ここでは炭素イオン線を指します。また、陽子線および炭素イオン線を包含する場合は粒子線と称しています。


      重粒子線治療の特徴
 ・痛みを伴わない
 ・臓器の機能や体の形態の欠損が少い
 ・容姿、容貌を損なわず、傷跡も残らない
 ・高齢者にも適用できる
 ・副作用が少ない
 ・早期なら根治可能
 ・X線では治療困難な、深部がんにも適用できる
 ・社会復帰までの期間が短い




(2)がんの治療法のまとめ

区分 外科療法 放射線療法 化学療法
療法  がん病巣を切り取って、根本的に治そうとする治療法です。現在もがん治療の中心となっています。  がん細胞に放射線を当てて、がん細胞のDNAを損傷させて、がん細胞の増殖を抑えたり、殺傷したりします。  抗がん剤でがん細胞の増殖を抑え、死滅させる治療法です。抗がん剤は注射や経口で血液中に入り、全身に運ばれて、がん細胞を攻撃します。
適応 ・早期がんから中程度進行(0〜U期)がんまで
・病変が局所に限局
・早期(T期)がんから手術不能の局所進行(V期)がんまで
・病変が局所に限局
・主として遠隔性転移のあるがん及び白血病
・病変が全身に進展
長所 ・根治性が高いとされている ・機能と形態の欠損が少ない
・全身への影響が少ない
・早期がんの治療成績は外科療法と同等(粒子線治療の場合)
・病状の進行が抑えられたり、延命効果があることもある
短所 ・機能の欠損が大きい
・部位、患者の条件(年齢、合併症など)により適応に制限がある
・粒子線治療費は他の治療法に比べて高い(現在保険適用外) 全身への影響が大きい(副作用が強い)
・根治性が低い



(3)治療に使われる放射線の種類


 エックス線やガンマ線などの放射線をがん病巣に照射すると、体の表面近くは線量が大きく、体の中を進むにつれて弱くなっていき、放射線はがん病巣で止まらずに、病巣を突き抜けてさらに後ろに進みます。

 粒子線は与えられたエネルギーで体内を進む深さが決まります。したがって、がん病巣の深さに相当するエネルギーで照射すると粒子線は病巣の終端部でピタリと止まり、がん病巣の後ろには進みません。




放射線の特性比較
項目 重粒子線 陽子線 エックス線
(1)線量の集中性 ×
(2)線量分布境界の鋭さ ×
(3)生物学的効果
(4)低酸素がんに対する効果 × ×
(5)放射線抵抗性がんに対する効果 × ×
(6)分割照射回数が少ない ×



(4)粒子線治療の特徴

 粒子線治療は、サイクロトロンやシンクロトロンなどの加速器で陽子や炭素イオンを光速の60〜80%まで加速し、これらをがんという標的に狙いを絞って照射する治療法です。
 これらの電荷を持つ粒子線は、ある深さにおいて最も強く作用するということ、一定の深さ以上には進まないという特性を持っています。したがって陽子線や重粒子線はがん病巣にその効果を集中させることが容易となり、がん病巣より深いところには影響を及ぼしません。

 線量の集中性に優れているということは、ミリ単位で病巣を叩くことが出来るため、手術をせずに治癒に導きうるということです。

 がん細胞は急速に成長するため、がん細胞の中心部分は血流が不足し、酸素が不足した状態になっています。このような状態の細胞にはX線やガンマ線などの放射線の効果が十分ではありません。しかし重粒子線は酸素が不足状態にある細胞に対しても、その効果を酸素が十分にある状態の場合と同じように発揮して細胞を死滅させることができます。

 また、外科的治療と異なり、痛みがほとんど無く、体の機能や形態の欠損がないことも特徴です。がんは早期であっても、高齢や体力がないために手術ができないような、お年寄り方にも適用できる治療です。入院中または退院後も、生活の質を高く保つことができ、治療効果が高いということも粒子線治療の特徴といえます。




陽子線と重粒子線の特性比較
項目 陽子線治療 重粒子線治療
線量の集中性 通常の光子線より線量の集中性が格段に優れているので、周囲の正常臓器に対する障害を著しく軽減できる 陽子線よりも更に集中性が優れている
細胞の殺傷効果 通常の光子線と同じ 陽子線より2〜3倍も効果がある
酸素濃度の低いがんに対する効果 通常の光子線と同じ 効果がある
放射線抵抗性がんに対する効果 通常の光子線と同じ 効果がある
分割照射回数 通常の光子線より少ない 陽子線より更に少ない
 日本の粒子線治療施設





8−1−2 経口抗がん剤TS-1
    (作成:2009/02/12)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 http://ja.wikipedia.org/wiki/TS-1

 TS-1(ティーエスワン)とは、胃癌などに使用される経口の抗悪性腫瘍剤(抗がん剤)の一種で、代謝拮抗剤に分類される。

 商品名は、ティーエスワン、一般名はテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムで、製造、販売元は大鵬薬品工業である。



(1)効能・効果

 厚生労働省より保険適応が認められているのは以下のとおり(括弧内は奏効率)。


胃癌(46.5%)
結腸・直腸癌(32.6%)
頭頸部癌(34.1%)
非小細胞肺癌(18.2%)
手術不能又は再発乳癌(21.8%)
膵癌(32.2%)
胆道癌
胆管癌




(2)用法・用量

 1日2回、28日間連続投与し、14日間休薬する。


(3)副作用

 骨髄抑制、播種性血管内凝固症候群(DIC)、溶血性貧血、肝障害、下痢、腸炎、間質性肺炎、消化管潰瘍・出血、急性腎不全、スティーブンス・ジョンソン症候群、ライエル症候群など。



(4)Q&A


Q1 このお薬の特徴は?
Q2 このお薬を飲むに当たって注意することは?
Q3 食欲がないのですが、食事をとらずにこのお薬を飲んでもよいですか?
Q4 食後に飲み忘れてしまったのですが…
Q5 このお薬であらわれやすい副作用は?
Q6 このお薬で体の抵抗力が弱くなることがあると聞いたのですが?
Q7 肝臓への影響はありますか?
Q8 このお薬で下痢することはありますか?
Q9 このお薬を使い始めてから、咳が出たり息切れすることがあるのですが…
Q10 消化器系の副作用はありますか?
Q11 腎臓への影響はありますか?
Q12 以前に薬疹があらわれたことがあるのですが…
Q13 治療を始めてから、においがわかりにくくなってきたのですが?


回答(A) ⇒ 国立がんセンター 抗がん剤(ティーエスワンカプセル)Q&A



(5)その他のリンク

頭頸部癌の臨床成績
ティーエスワン(TS-1)総合情報サイト(大鵬薬品)