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術後の肉体的変化(後遺症)

項番 変化・症状
(1) 首に穴があいたままになります。
(2) 空気が直接、気管、気管支、肺に入ります。
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鼻や口で補われていた湿度が不足し、痰がかたくなります。
空気を直接吸い込むため、ごみが入りやすくなります。
乾燥した空気やごみの刺激のため、痰の量が多くなります。
(3) 気管孔から水が入ると直接肺に入ってしまいます。
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大量に入ると溺れた時と同じ状態になってしまいます。
お風呂に肩までつかれなかったり、水泳ができなくなります。
(4) 声帯がなく、呼気の通り道変わるので、声が出せなくなります。
(5) 鼻や口から呼吸をすることができなくなるので食生活が変化します。
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嗅覚がほとんどなくなり、においをかぐことができなくなります。
熱い物に息を吹きかけて冷ますことができなくなります。
すすり込んで食べたり飲んだりすることができなくなります。
(6) その他におきること
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鼻や口を閉じて力むことができなくなります。
鼻がかめなくなります。
鼻水が多くなります。

  • (4)は、代用音声(食道発声、笛式、電動式、シャント)で第二の声を習得します。
  • (5)および(6)の1と2は、食道発声の訓練で改善がみられます。

※シャント発声:気管孔を押さえて、シャント(気道・食道接続トンネル)を通じて、肺からの呼気を食道内に誘導する。



頸部郭清を伴う場合

項番 郭清の範囲 後遺症 対処方法
(1) リンパ節と周囲の組織 肩こりのような頸部の違和感や腕を上げにくくなることがあります ストレッチ体操で改善する場合があります
(2) 胸鎖乳突筋、副神経 頸、肩、上肢などの運動制限が生ずることがあります
(3) 甲状腺 永続性の甲状腺機能低下症 甲状腺ホルモン補充薬の服用
(商品名:チラーヂンS)
(4) 副甲状腺 永続性の副甲状腺機能低下症 ビタミンD、カルシウム剤等の服用
(商品名:アルファロールカプセル)
 ※胸鎖乳突筋:頸部にある筋肉の一つ、首を曲げ、回転させる働きを持つ
 ※副甲状腺:上皮小体(甲状腺の裏に4つある)、カルシウムおよびリン酸の調整を司る



よくあるご質問

(参照・引用:高藤次夫 著「食道発声指導の手ほどき])
No 項目/区分 内 容
Q01 痰が多い  気管孔から痰がたくさん出て困っています。痰を止めるよい方法はありませんか。また将来減少するものでしようか。
A01 痰の性状に注意を  われわれは手術前の健康な状態の時でも、気管からサラサラした分泌物があって少量の痰となり、喉の方へ上がってきますが、無意識のうちに飲み込んでいたのです。

 手術後は、気管孔が前頸部につくられて気管呼吸をするようになりました。すると、今までと違って外気を直接気管孔から吸い込むので、ほこりや気温の差などが刺激となって痰の量が多くなります。

 痰の量は、少々多くなっても病気の心配はありません。問題はその性状です。白いサラサラした痰なら大丈夫、
ねばねばした粘液性の痰は、かるい風邪を引いた時に多い。黄色や少量の血液の混じった痰、さび色のものは要注意で、気管支炎や肺炎が怖いので医師の診察を受けてください。

 気管呼吸に慣れてきますと、痰の量も減少してきます。
−− 編集子註  私は、術後5年目ですが、手術直後と比べて少しは痰の量が減りましたが、外出時の痰の始末には往生します。ずーと、痰の始末からは、逃れられないようです。
Q02 頸部のしびれ  私は手術をうけたあと、顎の周辺にしびれ感がいつまでも残っていますが、これは治るものでしょうか。
A02 時間の経過で改善される(場合もある)
後遺症−
 喉頭全摘出術というのは、はじめ頸の前の皮膚を大きく切開してはがし、筋肉をいくつも切断したり軟骨を剥離して除去し、喉頭の大部分をひとかたまりとして摘出します。また頸のリンパ腺もまとめてお掃除するようにしてとり除きます。その折には、当然、大小の血管や神経を何本も切ったり、傷つけたりします。

 その結果、頸の傷がすっかり治ったあと、この場所に触っても感覚が鈍くなってしびれるように感じます。また触るとくすぐったいという人もいます。

 さらにコバルト照射を大量にうけると、男性の場合には毛根が侵されてひげも生えてきません。また毛細血管という細い血管や神経のはしがなくなってしまいます。
 しかし、1〜2年後には毛根や血管、神経の再生が少しずつはじまり、再びひげも生えてきますし、しびれ感もふつうに戻ってきましょう。
−− 編集子註  手術の仕方・状態によっては神経の切断されている状況が異なるため、少しずつ改善はされますが、再生が不可能な場合もあります(程度の差はありますがずーと後遺症が残ります)。
Q03 頭部が支えられない  手術をして3年になります。私は、胸から上と首、後頭部が硬直しています。頭を前傾するのはいいのですが、急に後方へ倒すとき、首がガクッと折れる感じがして痛みます。どうしてでしょうか。
A03 頸部郭清の後遺症  喉頭全摘出術は、喉頭の器官の大部分とこれに附着している筋肉のほとんどを切除しています。Yシャツの首のサイズが、以前よりずっと小さくなっていることに気づかれたことと思います。
 そのために、頭の重さを支えるのには頸椎(首の骨)とその後の筋肉だけになり、手術前より首に負担がかかります。したがって、ひどい肩こりに悩む人もいます。

 頭を前傾するときには、前もっておこることを考えているので、その運動も差し支えありません。ところが後方に倒す場合には、頸の骨が弓なりになり、頭部を支えるのに過重な負担がかかります。とくに、不意に起こった場合には強くガクッときて、かなりの衝撃を受ける状態になります。

 タクシーなどに乗るときにも、急発進、急停車のときにはむち打ち症にならないようよくよく注意してください。片手を(右または左)首の後に当てて、頭の重さを支え、前後の運動を緩和させる方法がよいと思います。
−− 編集子註  私の場合は、右側の胸鎖乳突筋(頸部にある筋肉の一つ、首を曲げ、回転させる働きを持つ)、副神経を含めて郭清したため頸の力で頭部を支えられないことがあります。左側を下に横臥した場合は、起き上がるときに手を添える必要があります(右側が下の場合は大丈夫ですが)。仰向けに仰臥する場合および仰臥から起き上がる場合にも手を添える必要があります。また、ひどい肩こり(特に右肩)は、時間の経過とストレッチ体操でかなり改善されました。
Q04 術後の鼻の役割  手術後は、気管孔から呼吸するようになると、鼻は無用の長物としてなんの働きもなくなるのでしょうか。
A04 リハビリ(食道発声の訓練)で嗅覚が戻る  手術後は、気管孔からもっぱら呼吸するようになるので、鼻から以前のように呼吸することはまったくできなくなります。

@うがい、嗅覚
 食道発声の練習で、吸引法(鼻から上部食道へ空気を吸い込んで発声する)が上達すると、うがいの動作がうまくなります。
 また、鼻の内部を空気が抜けるので、嗅覚が回復してきます。朝食の味噌汁の匂いがわかると、食欲が増進します。花の香りに一日の気分が明るくなります。

A鼻の内部共鳴
 食道発声を行うとき、鼻の方へ空気が抜ける練習をやります。とくに鼻音(マミムメモ、ナニヌネノ、ン)が正確に発音できるようになると、いわゆる鼻づまり声に聞こえません。一段とことばがはっきりしてきて、声もきれいに聞こえます。
 鼻は無用の長物どころか、手術後も日常生活に、また発声のおりにも大切な役割をしているのです。
Q05 飲み物が鼻から出る  手術後、食事をしていると食べたものが完全に飲み込めなかったり、鼻の方へ入ってしまいます。飲み物ですと鼻から出ることがありますが、どうしてでしょうか
A05 少量ずつゆっくり飲食をする  造影剤(バリウム)を口中に含んで、レントゲン透視をしながら嚥下(飲み下し)する状態を観察してみます。
 健常者の場合には、嚥下時にひととき呼吸がストップします。口内の空気は鼻咽腔のところですばやく鼻の方へ逃げ、バリウムは勢いよく食道の入り口を通過して、スーッと食道内に落ちていくのが分かります。
 喉摘者の場合には、嚥下したバリウムの進み方が遅い。ジンワリと鼻咽腔部にたまり、ゆっくりと食道の入口に向かいます。時には、そのまま鼻のいちばん奥にひっかかていることがあります。飲み物ですと逆流して、鼻からそのまま出てくることもあります。
 しかし、何年も経った人ですと、嚥下運動の速度がかなり速くなってきます。嚥下にかかわる筋の動きが回復してきたためでしょう。

 はじめのころは、とくに大口で食べたり、急いで飲み食いした時に、鼻に入ったり鼻から水が出たりするのですね。
 これを防止するのには、食事を少量ずつとること、飲み物はいっぺんにガバッと飲み込まないようにして、落ち着いてゆっくり行うように習慣をつけましょう。
−− 編集子註  人によって手術の仕方が違うため、食道の入口が極端に狭い人がいます。そのため、急いで飲み食いをしますと鼻の方に逆流したり、嚥下が困難になります。場合によっては、食道入口部の拡張手術が必要になります(バルーン(風船)を使ってある程度拡張できることもあります)。
Q06 気管孔が狭くなる  私は手術後1年半経ったものです。他の人は、カニューレがとれているのに、私の場合はまだ装着したままです。外していると喉の穴が小さくなるようです。どうして狭くなるのでしょうか。
A06 体質と手術の仕方  気管孔(喉の穴)がどんどん小さくなってくることは、喉摘者の方たちにとって呼吸が苦しくなるので一大事ですね。とくに風邪を引いた時などに、痰の塊がつまって大変に困ることがあります。
 その原因について、今まで分かっていることは、

  @体質的なもの
  A手術の条件によるもの

が考えられます。
 @では、体型が肥満していて頸部が太く首の短かい人、または傷口のはんこん瘢痕収縮(傷口・傷跡を小さくしようとする作用)の著しい人に多いですね。
 Aでは、手術による摘出範囲の大きい人、つまり頸部の組織を広範囲に切除したために気管孔を造るのに無理をした人に多いようです。これに対して、気管孔の周囲が余裕をもって造られている場合には、孔はほとんど小さくなりません。孔の小さくなる限度としては、鉛筆の太さぐらいでしょうか。こんなときには主治医と相談して、気管孔開大(拡大)手術をうけて孔を大きくしなければなりません。
Q07 気管孔の大きさ  私はこのごろ駅の階段をあがったり、ちよっと荷物を運んだりすると、呼吸が苦しくなるのですが、気管孔が小さくないでしょうか。
A07 0.5cm前後が限度  気管孔をの大きさを3段階に分けてみます。

@大きいもの(直径1.5p前後):夏になりますと小虫が多くなるので、とびこまれないように注意してください。寒い季節には痰がやや多くなります。ねばっこい痰を取るときやや不便です。プロテクター(保護エプロン)の用意を充分に。

A中ぐらいのもの(直径1p前後):適当な大きさで問題ありません。

B小さいもの(直径0.5p前後):鉛筆の太さぐらいが小さい限度です。人によっては、駆け足運動したり階段を上がるときに、動悸が激しかったり呼吸がぜいぜいします。風邪などひいて痰がかたまると呼吸の苦しくなるときがあります。

 以上のように小さい気管孔は要注意ですね。この場合には、その症状を主治医とよく相談されて、時には開大手術の必要があるかもしれません。

 不調の原因を小さい気管孔のせいばかりにしないで、高血圧、心臓病、糖尿病、肝臓、貧血など大丈夫か、などにも注意をむけてください。
−− 編集子註  私の場合は、喉頭全摘・頸部郭清術の1年後に肺癌を発症し、その左肺上葉部分切除術に際して、気管孔の径が9oしかなく(日常生活に何の支障もなし)麻酔チューブ(分離肺換気麻酔用のダブルルーメンチューブ(DLT))が入らないため、まず、気管孔拡張術をうけて20oに広げました(現在は18o程度に)。気管孔が大きくなって、痰が自然に垂れ流れてくるのに往生しています。
Q08 気管孔の大きさと食道発声  気管孔の穴の大きさで、声の出方に影響ありますか。
A08 関係ありません  気管孔の大きさには、大きなもの、小さなもの、中間ぐらいのものと大小さまざまな形があります。
 食道発声練習の初期の頃には、今までの発声習慣から胸いっぱいに空気を吸い込んで「ア」と出します。声が出ないので、ますます力んで試みます。したがって肺への呼吸の出し入れが激しく、繰返しやっていると気分が悪くなる(過呼吸症候群:前述)ことがあります。
 この場合には、気管孔の穴の大きいほうが疲れやすく不利ですね。
 しかし、練習しているうちに、先生から注意があって、食道発声はお腹から出すものだということが分かってきます。つまり、食道内に取り込んだ空気を、腹筋を硬くして絞り上げる。そのとき、気管孔からの呼気はなるべく押さえ気味にして出す。というやり方に変わっていきます。腹式深呼吸法ですね。
 そこで、気管孔の穴の大きさと、声の出方には関係ないということになります。
Q09 気管孔を押さえて発声  私は、手術して1年になります。はじめ気管孔に手指を当てて発声すると、よく声が出ることを教えられ、続けているうちに習慣になりました。手を当てないと声が出ないのです。どうしたらよいのでしょうか。
A09 呼気を抑え気味に腹式呼吸で  気管孔に手を当てて発声すると、呼気が出ないので胸腔が一定の容積を保つことができます。すると充分な腹圧をかけやすく、発声も容易に出せるようになったのです。始めのうちは、この要領で原音を出していたのです。さらに練習をつづけていると、次第に気張らなくてもかるくかるく出るようになります。

 この段階に到達したならば、気管孔に手を当てないで呼気を抑え気味にして、どんどん発声する練習をして下さい。穴をふさぐことに頼らないで、腹式呼吸に集中してやってみましょう。そのうちに気管孔を押さえなくても発声が可能となります。

 本来、食道発声は両手の使えることがすぐれたメリットの一つですから、その特徴を生かして自然なやり方でしゃべりましょう。
Q10 食道発声と胃の関係 @私は発声練習が長くなると、胸やけのようにすっぱいものがあがってくる感じになるのですが、どうしてでしょうか。胃が悪いのでしょうか。

A食道発声の練習中、お腹がパンパンに張って苦しくなります。それでも先生は「のみこめ、のみこめ」とはげましてくれます。この苦しさはどうしたらよいのでしょうか。
A10 食道発声の練習で空気腹にはなるが胃が悪くなることはない @について
 あなたは手術の前から、もともと胃の弱いたちでなかったですか。胃酸過多の症状は.ありませんでしたか。また、今まで胃病を患ったことはありませんか。食道発声の練習が原因で、胃を悪くしたということを耳にしたことはありません。まず大丈夫だと思います。

Aについて
 食道発声の練習の初期には、食道内に空気をとり入れる方法として、しきりに飲み込み動作を行います。
 食道には入口(食道入口部)と出口(噴門)とがあります。飲み込み動作は非能率的なやり方ですが、くりかえしくりかえしやっているうちにかなりの量となり、入口が開けば出口もゆるみ胃の中へ落ちていきます。このようにして胃はだんだん空気腹になって苦しくなります。@の質問は、この状態を胃が悪いと思い違いしているのではないでしょうか。
 これを防ぐのには、呑み込み式をはやく卒業して、舌根を使って押し込む方法(注入法)、鼻や口からすーっと吸い込む方法(吸引法)に切り替えると、胃の中へ落下する空気量はぐんと少なくなります。

 また発声時に食道内にとりこんだ空気はその都度全部使ってしまうこと。少量ずつ残っていると、その量が多くなって胃部へ落ちていきます。
 上達までの辛抱です。
−− 編集子註  腹部の膨張感が消えず、消化器内科を受診しましたが、食道発声訓練による胃部への空気の落ち込みも原因の一つのようです。
Q11 起床時の声  朝の起きがけに、声の出にくいことがあります。家族に「お父さん、今日はよくわかるよ」といわれることがあるかと思うと、その反対のこともあります。どうしてでしょうか。
A11 仮声門部が乾いていると出にくい  われわれは眠っているときには、つばきの分泌が少なくなっています。そうでないと、夜中によだれが出て困りますから。したがって夜間には口内が乾燥ぎみになります。朝、目を覚ました時に、口から喉の奥にかけてカラカラに乾いていることをよく経験することがありますね。

 下咽頭の底部にある新声門部も同様に、乾燥した状態になっています。新声門部の粘膜は、少々しめりけがあるときがよく振動するので、声の出方もよいことになります。反対に乾いていれば悪くなります。

 お茶を飲んで喉をうるおせば、よい声が出てきます。
 日によって声の出方が違うのは、その日の体調にも大いに関係があると思います。
Q12 食道再建術施行者の発声  食道再建術を行った者です。発声時に、先生に教えられたとおりに、首の前の皮膚に軽く指を当てると、声がよく出るのはどうしたわけでしょうか。
A12 空気の取り込みは容易だが、管腔を狭くして発声する必要がある  再建食道の管腔に狭めをつくってやることで、食道内の空気の逆流速度がはやくなり、ついに粘膜の振動が音にかわることになります。
 しかし大勢のなかには、指で押さえることもしないで、いい声を出している人がいるので感心させられます。

 なお食道再建術施行者は、単純喉摘者(喉摘手術だけをうけた人)の場合と違って食道入口部がありません。そこで食道内への空気の取り入れは舌の動きをしないで、直接すーっと吸い込む要領を体得してください。練習によって吸引力がついてくれば、あとは音(発声音)を出すことに専念すればよいのです。