(03-04)

3-4 実技指導

3-4-1 食道発声 実技指導の実際

 「令和元年度 日喉連 近畿ブロック 指導員養成研修会」に向けた、「食道発声 実技指導 -中・上級の部」の事前リハーサルの模様をビデオで掲載します。喉友会指導員各位のご参考になれば幸いです。

          

 「平成23年度 日喉連 近畿ブロック 指導員養成研修会」に向けた、「食道発声 実技指導 -中・上級の部」の事前リハーサルの模様をビデオで掲載します。喉友会指導員各位のご参考になれば幸いです。

          




3-4-2 食道発声 実技指導要領

実技指導要領

令和元年度

会話へのプロセスーPART

食道発声の究極の目的であります、“健常時と変わらぬ会話”に向かって、効果的な練習法は何か?又成果に近道はないのか?等々色々と模索し続けて居りますが、行き着く所、

“同じ事を千回くり返せば、どんなことでも、その事の熟練者になれる!”との言葉通りで、工夫しながら、練習を続ける事だけが、成果を上げる事になります。

そもそも食道発声は、身体の部位に、本来は備わっていない機能の働きをしてもらい、第二の声をつくっている訳です。当然の様に、練習に手抜き等すれば、上達の近道どころか、いっぺんに声質が悪くなってしまいます!

一旦“声”を失った我々が、さらなる向上を目指し、自らの声で、世間の皆様と、よりスムーズな会話が出来る様に,練習している風景を、今日は見てください!

 

※教室では、先ず、全体でのウォーミングアップを致します。首まわりのストレッチ・深呼吸・

基本発声・音階の発声等を行い、その後各テーブルの練習に入ります。

基本練習

単音発声:“ア行~ワ行”の50音を、一人ずつ順番に1行ずつ発声し、後の人が復唱します。

23サイクル行えば、100150回の発声をする事になります。

大きく口を開け、一音一音をはっきりとしっかり意識して発声する事で、明瞭度を上げる

効果を期待しております。

連音発声: ア、ア、ア・イ、イ、イ・ウ、ウ、ウ・・・といった感じに3連または5連発声を、単音発声同様に全員で行います。

息継ぎを自然に覚える効果を期待しております。勿論3連、5連、10連・・と練習する事で、より効果は期待出来ると思います。

長音発声:テーブルでは、長音と単音を複合させて、“アッ”と強い単音発声後すぐに

“ア ~ ”と長音発声する練習を行なっています。又その逆でも大丈夫です。

長音は発声を滑らかにするばかりでなく、リズム良く言葉を繋げる効果があります。

長音の後に、息継ぎをして、強く単音を発声する事により、次の発声の為の吸引が自然と行える。

吸引の雑音や発声前に口をモグ・パクさせる癖の方は、長音の練習を多く行う事により、

“癖”解消の足掛かりになる事もあります。

発声の強弱:アッ、アッ、アッ、アッ、ア、ア、ア~(太字は強く)7音節迄又、

アッアッアッ3段階の発声で、その都度、強く発声する練習も行っています。

此の練習は、発声時の強調する所に強弱を付けると同時に、言葉に幅を持たせる効果が、

あると思います。

連音発声と長音発声の連動:アッ、アッ、アッ、アッ、ア~、ア~、ア~

イッ、イッ、イッ、イッ、イ~、イ~、イ~・・・7音節迄

此の練習は発声時の抑揚、滑らかさを出す時に繋がる練習と思います。

私のテーブルでは、この様に基本練習を約30分かけて実施しております。この練習を、毎回

続ける事により、言葉の明瞭度を取り入れ、自然に息継ぎが出来る様になって行くと思います。

 

会話、対話力をつける為の練習

 

先ず相手に自分の言葉を伝えなければなりません。

しかし、中々最初は、力が入ったり、健常者だった頃の癖で早口になり易いです。

ゆっくり、間を取り、滑らかに、抑揚と強弱を付ける。これが、会話をする為に、

我々食道発声者の必須条件となります。そこに到達するためには、練習しかありません。

 

それでは実際に、会話練習を行って行きたいと思います。

※道で近所の人とバッタリ出会った時の会話

(先ず、一本調子で)

Aさん「おはようございます。いい天気ですネ。どちらか、おでかけですか。」

Bさん「はい、天気もいいので、ウオーキングしようと、公園まで行ってきます。」

(次に、抑揚、間を取って)

Aさん「おはようございます。いい天気ですネ。どちら?おでかけです?」

Bさん「はい!天気いいのでウオーキンしようと、公園まで行っきます。」

Aさん「じゃ~お気を付けて!」

Bさん「ありがとう!ございます。」

 

※居酒屋に行った時の会話。(実際は店内が騒々しく中々食道発声では大変と思いますが?)

客役「あいてますか?」           店役「ハイ!いらっしゃい!どうぞ」

客役「まず、生ビールください!」      店役「ハイ!!生ビール一丁!!」

店役「ご注文お伺いします」       客役「エーと、枝豆、冷奴、刺身盛り合わせ」

店役「以上で、よろしいですか。」    客役「取り敢えず、それでお願いします。」

店役「ハイ!ありがとうございます。」

 

教室ではこの様に色々なシミュレーションを作りながら練習を行っております。

せっかく発声が出来る様になったのですから、積極的に自分から相手と対話を求めて行く

姿勢も大切と思います。

巧く行かなかった部分を顧みながら練習し、繰り返し挑戦続ける事が大切と思います。

“あせらず”“あわてず”“あきらめず”を合言葉に頑張りましょう!

 




平成23年度

(1)中級クラスの実技指導要領

「中級クラスの実技指導要領」

 

財団法人 阪喉会 中・上級教室

 

1.中級クラスの構成

 

①初級から中級を目指す受講生

②中級から上級を目指す受講生

 

  => それぞれのレベルに合った効果的な指導をするためにテーブルを分けています。

 

 

2.中級クラスのモットー

 

 中級クラスの指導では、「強調と実践」をモットーとして、重要な基本となるポイントを、毎回、繰り返し練習することにより、吸引、息継ぎ、声の強弱、抑揚などの、スムーズな習得を目指します。

 

 

3.段階的指導

 

ステップ1.腹式呼吸で、単音の連続発声を反復練習して、吸引法のマスターを目指します。

ステップ2.会話に重要な2~4音節の発声が、滑らかに出来るように、2秒~3秒間の長音の発声練習をします。

ステップ3.5音~7音を1息で発声出来るように練習します。

 

 

4.不明瞭となりがちな語尾に対する対処法

 

 文章の朗読や、会話をスムーズにするには、食道発声では、空気の量が少ないので、声量が続かなくなって、語尾が不明瞭になります。その対処として、リズムよく、繰り返し、空気を取り入れる必要があります。

 

 

<語尾を明瞭に発声するための練習>

 吸気から、声出しまでは、0.3秒~0.5秒で(遅くとも1秒以内で)、例えば、

 

山と、川    僕と、君    上と、下

今日は、どうも、ありがとう、ござい、ました

 

のように、言葉を区切って、語尾まで明瞭に発声できるように練習します。

 




(2)上級クラスの実技指導要領

「上級クラスの実技指導要領」

 

財団法人 阪喉会 中・上級教室

 

1.基本反復練習(30分:教室での目安時間です)

 

 吸引、息継ぎ、声の強弱、抑揚などのスムーズな習得を目的として、毎回、基本を反復練習します。

 

(1)五十音の単音発声 「ア、イ、ウ、エ、オ、 カ、キ、ク、ケ、コ・・・」

(2)五十音の三連発声 「アアアイイイウウウエエエオオオ カカカキキキククク・・・」

(3)五十音の長音と短音の複合発声「アーアッ、イーイッ、ウーウッ、エーエッ・・・」

(4)アの連続30音 「ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア・・・」

(5)数読み1 「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17・・・」

(6)数読み2 「1、11、111、1111、11111、111111、1111111、・・・、1111111111111111」
(読み:一、十一、百十一、一千百十一、・・・、一千百十一兆一千百十一億一千百十一万一千百十一)

 

 

 

2.応用練習-日常会話へのアプローチ(30分)

 

 健常者と自然な日常会話ができるようにカリキュラムを工夫して練習をします。

 

(1)本読み(文章の朗読)

使用テキスト:①佐藤武男著「食道発声教本」、②阪喉会オリジナル副テキスト

ポイント:相手に聞かせるように、ゆっくりと文節で間をとりながら、語りかけるように発声するよう心掛ける。

 

 

(2)相手に確実に言葉(意思)を伝える練習

A.自分の名前、生年月日、住所、電話番号・・・等

B.日本の県名、世界の国名、有名人の氏名・・・等

C.日常会話(おはよう、こんにちは、ただいま、おかえり・・・等)に一言添えて

D.タクシー乗車時の行き先、目的地への指示->相手に反復してもらって確認

E.尻取りゲーム(語尾が明確でないとゲームが継続できない)

F.短いスピーチ(提示された題目に対して自分の言葉で思い(考え)を伝える)

 




◆教材・教本

(1)食道発声教本


佐藤 武男 著

○食道発声教室で正テキストとして使用しています。


○繰り返し反復練習する教本として最適です。





(2)食道発声法


佐藤 武男 著


○理論の部分は少し専門的ですが。


第1章 喉摘者のリハビリテーション
第2章 食道発声法の理論
第3章 食道発声教本




第1章 喉摘者のリハビリテーション

 1.喉摘者について


 2.喉摘者のリハビリテーション


 3.音声言語について

  1.人間は言語動物である
  2.音声言語のしくみ
  3.日本語の特徴
  4.代用音声について
  5.食道発声
  6.パイプ式人工喉頭
  7.電気人工喉頭
  8.シャント発声



 第2章 食道発声法の理論

 1.空気摂取法について


  1.空気摂取の基本運動について
     注入、吸引、注入と吸引の整合
  2.肺呼吸運動との相関からみた空気摂取


 2.食道の運動

  1.空気摂取時の食道運動
  2.発声(吐気)時の食道運動
  3.食道内圧曲線


 3.仮声門(新声門)の形態

  1.喉摘後の仮声門について
  2.下咽頭・頸部食道癌摘出後の仮声門について


 4.食道発声の習熟度


 5.食道発声のための手術法




 第3章 食道発声教本

 1.食道発声教室について


 2.食道発声法の原理


 3.母音「あ」の発声


 4.50音発声練習


 5.基礎会話練習


 6.普通会話練習


 7.食道発声習熟のために





(3)各種発声法の理論と実際


    監修 佐藤武男


食道発声、笛式人工喉頭、電動式人工喉頭それぞれについて、その特徴および習得のポイントを映像で分かりやすく解説したビデオです。



◆VHSビデオをDVDにしたもの =>
【現在(2019/10現在)はDVDのみ】